インプラント周囲炎とは?症状セルフチェック・治療費・予防を解説
「インプラントを入れたあとに歯茎が腫れてきた」「インプラントも歯周病になるの?」と不安を抱えていませんか。結論からお伝えすると、インプラント周囲炎は「インプラントの歯周病」ともいえる炎症疾患で、報告により罹患率は10〜20%程度とされています。ただし、骨が溶ける前の早い段階で見つけられれば、手術を伴わない処置で進行を止められるケースも多く、日々のセルフケアと定期メンテナンスが最大の予防策です。本記事では症状のセルフチェック、原因、段階別の治療法、放置リスク、費用の考え方、予防習慣までを、出典を示しながら網羅的に解説します。
この記事でわかること(目次)
- インプラント周囲炎とは|「インプラントの歯周病」を正しく理解する
- 症状セルフチェックリスト|初期〜進行期
- 原因とリスク因子
- 放置するとどうなるか|脱落・全身への影響
- 治療法|非外科・外科・再生療法・レーザー
- 治療費と保険適用の考え方
- クリニック保証(ワランティ)との関係
- 撤去に至った場合の再埋入プロセス
- 予防のための5つの習慣
- よくある質問(FAQ)
インプラント周囲炎とは|「インプラントの歯周病」を正しく理解する {#about}
インプラント周囲炎(ペリインプラントティス)とは、インプラント周囲の組織に細菌感染による炎症が起き、インプラントを支える骨(歯槽骨)が溶けて減っていく疾患です。2017年に開催された歯周病・インプラント周囲疾患に関する世界ワークショップでは、インプラント周囲疾患が「インプラント周囲粘膜炎」と「インプラント周囲炎」に整理され、国際的な定義が示されました(Berglundh et al., 2018)。

2つのステージ:インプラント周囲粘膜炎と周囲炎
インプラント周囲に起こる炎症は、進行度合いによって大きく2つに分けられます。
-
インプラント周囲粘膜炎(しゅういねんまくえん)
インプラント周囲の歯茎(粘膜)にのみ炎症が起きている段階です。天然歯でいう「歯肉炎」に相当します。この段階では骨の吸収はまだ始まっておらず、適切な処置を受ければ改善が見込めます。 -
インプラント周囲炎(しゅういえん)
炎症が歯茎を超えて、インプラントを支える顎の骨(歯槽骨)にまで及んだ段階です。天然歯でいう「歯周炎」に相当し、骨が吸収(溶けて減少)するとインプラントの安定性が失われる恐れがあります。
インプラント周囲粘膜炎を放置すると、やがてインプラント周囲炎へ進行するため、粘膜炎の段階での早期発見・早期対処がきわめて重要です。
天然歯の歯周病との違い
インプラント周囲炎と天然歯の歯周病は、原因が細菌感染であるという点は共通していますが、いくつかの重要な違いがあります。
- 歯根膜(しこんまく)がない:天然歯には歯根膜という歯と骨をつなぐクッションのような組織がありますが、インプラントにはありません。そのため、インプラント周囲では細菌が骨へ直接到達しやすく、炎症が進行するスピードが速い傾向にあるとされています。
- 自覚症状が少ない:天然歯の歯周病でも自覚症状は出にくいですが、インプラント周囲炎はさらに痛みを感じにくいといわれています。気づいたときには骨の吸収がかなり進んでいるケースも珍しくありません。
- 血液供給の差:インプラント周囲の組織は天然歯と比べて血管が少ないため、免疫による防御力がやや弱く、感染が広がりやすいとされています。
こうした特徴があるからこそ、インプラント治療後は天然歯以上に定期的なメンテナンスが重要です。実際、定期メンテナンスを受けている患者の周囲炎有病率は9.0%であるのに対し、受けていない患者では18.8%と約2倍の差があると報告されています(Dreyer et al., 2018)。
メンテナンスの具体的な内容については「インプラントのメンテナンス|通院頻度・費用・ケア方法を解説」で詳しく紹介しています。なお、天然歯の歯周病そのものとインプラントの関係については「インプラントと歯周病の関係|治療前後の注意点」もあわせてご参照ください。
インプラント周囲炎の症状セルフチェックリスト|初期〜進行期 {#checklist}
インプラント周囲炎は自覚症状が出にくい疾患ですが、注意深く観察すれば初期段階で気づけるサインがあります。以下のチェックリストを参考に、ご自身のインプラント周囲の状態を確認してみましょう。

初期(インプラント周囲粘膜炎の段階)
- インプラント周囲の歯茎が赤みを帯びている
- 歯磨き時にインプラント周囲から出血がある
- 歯茎にわずかな腫れや膨らみを感じる
- インプラント部分を押すと軽い違和感がある
中期(インプラント周囲炎の初期段階)
- 歯茎の腫れが明らかに大きくなった
- 出血が歯磨き以外のとき(食事中など)にも見られる
- インプラント周囲から膿(うみ)が出る
- 口臭が強くなったと感じる
- 歯茎が下がり、インプラント体の金属部分がうっすら見える
進行期(重度のインプラント周囲炎)
- インプラントがぐらつく・動揺を感じる
- 噛んだときに痛みやしびれがある
- 歯茎が大きく退縮し、インプラント体が明らかに露出している
- 持続的な痛みや不快感がある
1つでも当てはまる項目がある場合は、早めにかかりつけの歯科医院で検査を受けることが望ましいとされています。特に、膿が出る・ぐらつきを感じるなどの症状は進行が疑われるサインです。なお、インプラントのぐらつきは周囲炎以外の原因(ネジのゆるみなど)でも起こり得るため、自己判断せず歯科医院で原因を確かめましょう。
インプラントのトラブル全般については「インプラントの失敗・後悔事例と対策」でもまとめています。
インプラント周囲炎の原因とリスク因子 {#causes}
インプラント周囲炎は、主に細菌感染(プラークの蓄積)が原因で発症しますが、それを助長するさまざまなリスク因子があります。

| リスク因子 | 詳細 |
|---|---|
| 不十分な口腔ケア | 歯垢(プラーク)がインプラント周囲に蓄積すると、細菌が繁殖して炎症を引き起こす。インプラント周囲炎の最大の原因とされる |
| 喫煙 | ニコチンが血管を収縮させ、歯茎への血流を減少させる。インプラント周囲炎のリスクが非喫煙者の約2〜3倍に上昇するという報告がある |
| 糖尿病 | 血糖コントロールが不良な場合、免疫機能が低下し感染症にかかりやすくなる。歯周組織の治癒力も低下するためリスクが高まる |
| セメント残留 | 上部構造(被せ物)をセメントで固定する方式の場合、接着剤が歯茎の下に残ると、そこに細菌が付着して炎症の原因になる |
| 噛み合わせ不良 | 特定のインプラントに過度な咬合力がかかると、周囲の骨にダメージを与え、炎症を助長する可能性がある |
| メンテナンス不足 | 定期検診を受けていないと、歯石の除去や噛み合わせの調整が行われず、問題が見逃されやすい |
| 歯周病の既往歴 | 天然歯で歯周病にかかった経歴がある方は、口腔内の歯周病原菌が多い傾向にあり、インプラント周囲炎のリスクも高まる |
これらのリスク因子は単独ではなく、複数が重なるとリスクがさらに上昇します。例えば、喫煙者で糖尿病があり、メンテナンスを受けていないケースでは、リスクが大幅に高まると考えられます。
喫煙と飲酒がインプラントに与える影響は「インプラントと喫煙・飲酒|治療への影響と注意点」で、糖尿病などの持病がある場合の注意点は「糖尿病・持病がある人のインプラント治療」で、それぞれ詳しく解説しています。インプラントの長期的な耐久性については「インプラントの寿命は何年?耐久性とケアを解説」もあわせてご参照ください。
インプラント周囲炎を放置するとどうなるか|脱落・全身への影響 {#neglect}
インプラント周囲炎は痛みが出にくいため、「様子を見よう」と放置してしまいがちです。しかし、炎症をそのままにしておくと、口の中だけでなく全身にも影響が及ぶ可能性があります。
- インプラントの脱落:骨の吸収が進むとインプラント体を支える骨が失われ、最終的にインプラントが動揺・脱落する恐れがあります。いったん失われた骨は自然には元に戻りにくく、再治療のハードルが上がります。
- 隣の歯・周囲組織への波及:炎症が広がると、隣接する天然歯やその周囲の骨にも影響し、口腔全体の状態が悪化することがあります。
- 咬み合わせの崩れ:インプラントが不安定になると噛む力のバランスが崩れ、ほかの歯に負担が集中して二次的なトラブルを招くことがあります。
- 全身疾患との関連:歯周病原菌や炎症性物質は、糖尿病の悪化や誤嚥性肺炎、動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳梗塞など)との関連が指摘されています。インプラント周囲炎も同じ細菌感染・炎症であるため、口腔内の慢性的な炎症を放置しないことが、全身の健康管理の観点からも大切です。
早期であれば手術を伴わない処置で対応できることも多い一方、進行してからでは外科手術や撤去・再埋入が必要になり、時間的・費用的な負担が大きくなります。「痛くないから大丈夫」と自己判断せず、異変を感じたら早めに受診することが、結果的に体にもお財布にもやさしい選択です。
インプラント周囲炎の治療法 {#treatment}
インプラント周囲炎の治療は、進行度に応じて「非外科的治療」と「外科的治療」に大別されます。近年は、これらに加えてレーザーや光殺菌を併用する方法も報告されています。
非外科的治療(初期〜中期の炎症に対するアプローチ)
骨の吸収がまだ軽度、あるいは粘膜炎の段階であれば、手術を伴わない方法で炎症のコントロールを目指します。
- 機械的デブライドメント:インプラント表面に付着した歯垢・歯石を専用器具で除去します。チタン製やカーボンファイバー製のスケーラー(歯石除去器具)、超音波スケーラーなど、インプラント表面を傷つけにくい器具が使われます。
- エアーアブレーション:微粒子パウダーをエアーで吹きつけ、インプラント表面の汚染物質を除去する方法です。インプラントの微細な凹凸に入り込んだバイオフィルム(細菌の塊)の除去に用いられます。
- 薬物療法(局所投与):抗菌薬をインプラント周囲のポケット(歯茎とインプラントの隙間)に直接投与します。デブライドメントと併用されることが一般的です。
- 口腔衛生指導:歯科衛生士によるブラッシング指導や、歯間ブラシ・デンタルフロスの使い方の再確認を行います。患者自身のセルフケアの質を向上させることが、再発予防の土台になります。
外科的治療(中期〜重度の炎症に対するアプローチ)
骨の吸収が一定以上進行している場合は、外科的な処置が必要になることがあります。
- フラップ手術(切開・剥離手術):歯茎を切開してインプラント体を露出させ、直視下でインプラント表面の徹底的な清掃・汚染除去を行います。天然歯の歯周外科手術と同様の考え方です。
- 再生療法:吸収された骨の再生を図るために、骨補填材(こつほてんざい=骨の代わりになる材料)やメンブレン(骨再生を促す遮断膜)を用いた手術を行います。骨の欠損形態によって適応が限られますが、成功すればインプラントの安定性を回復できる可能性があります。
- インプラント体の表面処理:フラップ手術時に、インプラント表面に付着した汚染物質をレーザーや化学薬品で除去し、清潔な状態に戻す処置です。インプラントプラスティ(表面を滑沢にする処置)を行うこともあります。
- インプラント体の摘出(撤去):骨吸収が著しく進行し、保存が困難と判断された場合は、やむを得ずインプラント体を取り除くことがあります。撤去に至った場合の再治療については後述します。
レーザー治療・光殺菌(aPDT)という選択肢
近年は、汚染されたインプラント表面の殺菌を目的として、レーザー照射や光線力学療法(aPDT=光感受性物質と特定波長の光を組み合わせて細菌を殺菌する方法)を、従来のデブライドメントや外科処置と併用する方法も報告されています。ただし、これらは単独で確立された標準治療というより、従来治療の補助として用いられる位置づけであり、適応や効果には個人差があります。導入状況はクリニックによって異なるため、関心がある場合は担当の歯科医師に確認するとよいでしょう。
段階別:インプラント周囲炎の治療法比較
インプラント周囲の炎症は、段階によって適切な治療法が異なります。以下の表で段階別の治療アプローチを整理します。

| 段階 | 状態 | 主な治療法 | 治療の目標 | 予後(見通し) |
|---|---|---|---|---|
| インプラント周囲粘膜炎 | 歯茎のみに炎症。骨吸収なし | 機械的デブライドメント、口腔衛生指導、薬物療法(局所投与) | 炎症の消退と健康な粘膜の回復 | 適切な処置で改善が期待できる |
| 軽度のインプラント周囲炎 | 骨吸収が軽度(インプラント体の長さの25%未満) | 非外科的デブライドメント+局所抗菌薬。改善が見られなければ外科的アプローチを検討 | 炎症の抑制と骨吸収の停止 | 早期対処で安定化が見込めるケースが多い |
| 中等度のインプラント周囲炎 | 骨吸収が中程度(25〜50%程度) | フラップ手術+インプラント表面の汚染除去。骨欠損形態によっては再生療法を併用 | 汚染除去・可能な場合は骨の再生 | 骨欠損の形態や全身状態に左右される |
| 重度のインプラント周囲炎 | 骨吸収が著しい(50%超)。動揺あり | 再生療法の適応を検討。保存困難な場合はインプラント摘出 | 可能であれば保存、困難であれば安全な摘出 | 保存が難しいケースもある。摘出後の再埋入は骨の回復状態による |
※骨吸収の割合はあくまで目安です。実際の治療方針は、レントゲン検査やプロービング検査(インプラント周囲のポケットの深さを測定する検査)の結果、全身状態などを総合的に考慮して歯科医師が判断します。
治療の見通しについては、粘膜炎や軽度の周囲炎の段階では非外科的処置で炎症をコントロールできることが多い一方、中等度以降では再発の可能性もあり、治療後も継続的なメンテナンスが前提になります。治療の成功や再発のしやすさは、骨欠損の形・喫煙や糖尿病といった全身状態・セルフケアの質によって左右されるため、「必ず治る」「二度と再発しない」と断言できるものではない点にご留意ください。
痛みへの不安がある方は「インプラントは痛い?術中・術後の痛みと麻酔法を解説」もご参照ください。
インプラント周囲炎の治療費と保険適用の考え方 {#cost}
「治療にいくらかかるのか」は、多くの方にとって気になるポイントです。ただし、インプラント周囲炎の治療費はクリニック・処置内容・口腔状態によって大きく異なるため、ここでは金額そのものではなく「費用がどのように決まるか」という考え方を整理します。
- 原則として自由診療:インプラント治療そのものが基本的に保険適用外(自由診療)のため、インプラント周囲炎の治療も自由診療となるケースが一般的です。そのため費用は各クリニックが独自に設定しており、公的に定まった料金体系はありません。
- 処置の内容によって費用は段階的に変わる:一般的に、クリーニングや機械的デブライドメントなどの非外科的処置に比べ、フラップ手術や骨補填材・メンブレンを用いた再生療法といった外科的処置、さらに撤去・再埋入へと進むほど、処置が大がかりになり費用も増える傾向があります。つまり、進行してから対処するほど時間的・費用的な負担が大きくなりやすいといえます。
- 具体的な金額は必ず事前確認を:実際の費用は口腔状態・処置範囲・使用する材料・地域・クリニックの料金設定によって大きく異なります。金額はクリニックによって差が大きいため、治療前に必ず見積もりを取り、内訳を確認しておきましょう。
費用面からも、軽度のうちに対処するほど処置が小さく済みやすく、負担も抑えられる傾向があります。この点でも「早期発見・早期治療」が重要です。
インプラント治療全体の費用感については「インプラントの費用ガイド|相場・内訳・保険・節約法」で詳しく解説しています。
クリニック保証(ワランティ)との関係 {#warranty}
インプラント治療には、多くのクリニックで「保証制度(ワランティ)」が設けられています。周囲炎による不具合が保証の対象になるかどうかは、費用負担を左右する重要なポイントです。
- 保証の対象範囲はクリニックごとに異なる:上部構造やインプラント体の破損・脱落を対象とする保証は多いものの、周囲炎の治療費まで含むかどうかはクリニックによって異なります。契約前に「周囲炎になった場合はどこまで保証されるか」を確認しておきましょう。
- 定期メンテナンス通院が保証の条件になることが多い:多くの保証では、「指定された頻度で定期メンテナンスに通っていること」が保証適用の前提条件です。セルフケアや通院を怠って周囲炎が進行した場合、保証が受けられなくなるケースがあります。
- 撤去・再埋入への適用:保証内容によっては、一定期間内のインプラント脱落について再埋入費用の一部または全部がカバーされることもあります。逆に、喫煙や通院不履行などが保証除外事由になっている場合もあります。
保証の見方や確認すべきポイントは「インプラントの保証制度|内容・期間・注意点」で詳しく解説しています。契約時に保証書の条件をよく読み、周囲炎に関わる範囲を確認しておくことが、後々の費用不安を減らすことにつながります。
撤去に至った場合の再埋入プロセス {#reimplant}
重度のインプラント周囲炎で保存が困難となり、インプラント体を撤去した場合でも、条件が整えば再びインプラントを入れられることがあります。ただし、いくつかのステップと期間が必要です。
- 撤去と炎症のコントロール:まずインプラント体を撤去し、感染した組織を清掃して炎症を落ち着かせます。
- 骨の回復を待つ期間:撤去後は、骨や歯茎が回復するのを待ちます。回復に要する期間は骨の状態によって異なり、数か月かかることもあります。
- 骨造成の要否を判断:周囲炎によって骨が大きく失われている場合、再埋入の前に骨を増やす「骨造成(こつぞうせい)」が必要になることがあります。骨造成を行うと、その分だけ治療期間と費用が追加されます。
- 再埋入:骨の状態が十分に回復したと判断されれば、改めてインプラントを埋入します。
再埋入が可能かどうか、骨造成が必要かどうかは、レントゲンやCT検査の結果と全身状態を踏まえて歯科医師が判断します。再治療の全体像は「インプラントの再治療|やり直しの流れと費用」、骨造成の術式や費用は「インプラントの骨造成|サイナスリフト・GBRなどの種類と費用」で詳しく解説しています。
インプラント周囲炎を予防するための5つの習慣 {#prevention}
インプラント周囲炎は、日々の習慣で発症リスクを大きく下げることが可能です。

習慣1:毎日の丁寧なブラッシング
インプラント周囲に歯垢を残さないことが最も基本的な予防策です。特にインプラントと歯茎の境目は汚れが溜まりやすいため、毛先を歯茎のラインに45度の角度で当てるバス法(歯茎のポケットに毛先を入れて小刻みに動かす磨き方)が効果的とされています。
電動歯ブラシの使用も有効ですが、歯科医院で自分に合った磨き方の指導を受けることが望ましいでしょう。
習慣2:歯間ブラシ・デンタルフロスの使用
歯ブラシだけではインプラントと隣の歯の間や、インプラント周囲の凹凸部分の汚れを十分に除去できません。歯間ブラシやデンタルフロスを1日1回以上使用することで、プラークの残留を大幅に減らせます。
インプラントの構造上、天然歯よりも歯間部のスペースが広くなることが多いため、適切なサイズの歯間ブラシを歯科衛生士に選んでもらうと効果的です。
習慣3:定期的なプロフェッショナルケア(定期検診)
インプラント治療後は、3〜6か月に1回の定期検診が一般的に推奨されています。定期検診では以下の項目が確認されます。
- インプラント周囲のポケットの深さ測定(プロービング検査)
- レントゲンによる骨の状態の確認
- 噛み合わせのチェックと調整
- 専門器具によるクリーニング(PMTC=専門家による機械的歯面清掃)
- 上部構造のゆるみや破損の確認
セルフケアだけでは除去しきれない歯石やバイオフィルムを専門家が取り除くことで、インプラント周囲炎のリスクを大きく低減できます。前述のとおり、定期メンテナンスを受けている患者と受けていない患者では有病率に約2倍の差があると報告されています(Dreyer et al., 2018)。
習慣4:禁煙・減煙
前述のとおり、喫煙はインプラント周囲炎のリスクを約2〜3倍に高めるとされています。完全な禁煙が理想ですが、難しい場合でも本数を減らすことでリスクの低減が期待できます。
近年普及している加熱式タバコについても、ニコチンを含む点は紙巻きタバコと同じであり、歯茎への血流低下のリスクは存在するため注意が必要です。喫煙とインプラントの関係は「インプラントと喫煙・飲酒|治療への影響と注意点」で詳しく解説しています。
習慣5:全身の健康管理
糖尿病や骨粗しょう症など、全身疾患がインプラント周囲炎のリスクを高めることがわかっています。特に糖尿病では、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー=過去1〜2か月の平均血糖値を示す指標)を良好にコントロールすることが、口腔内の感染リスクを下げることにもつながります。
また、ストレスや睡眠不足による免疫力の低下も感染症のリスク因子です。規則正しい生活習慣を心がけることが、インプラントの長期維持にも寄与します。
インプラント周囲炎に関するよくある質問(FAQ) {#faq}
Q1. インプラント周囲炎は必ずなるのですか?
いいえ、すべてのインプラント患者に発症するわけではありません。報告によって数字はばらつきますが、インプラント周囲炎の発症率は10〜20%程度とされています(Derks & Tomasi, 2015 など)。適切なセルフケアと定期検診を継続している方の発症リスクは低いことがわかっています。
Q2. インプラント周囲炎になったら、インプラントは必ず抜くことになりますか?
必ずしも抜く(摘出する)必要はありません。粘膜炎の段階や軽度の周囲炎であれば、非外科的治療で炎症をコントロールし、インプラントを保存できるケースが多くあります。ただし、骨吸収が著しく進行してインプラント体の動揺が生じている場合は、摘出が検討されることもあります。だからこそ、早期発見・早期治療が大切です。
Q3. インプラント周囲炎の治療に保険は適用されますか?費用はどのくらい?
現在の制度では、インプラント治療そのものが基本的に保険適用外(自由診療)のため、インプラント周囲炎の治療も自由診療となるケースが一般的です。費用はクリニックや処置内容によって大きく異なり、公的に定まった料金体系はありません。一般に、非外科的な処置よりも外科手術や撤去・再埋入へと進むほど処置が大がかりになり費用も増える傾向があるため、早期に対処するほど負担を抑えやすいといえます(費用の考え方はこちらを参照)。具体的な金額は治療内容やクリニックの方針によって異なるため、事前に担当の歯科医師に確認しておくことが望ましいでしょう。
Q4. 天然歯が歯周病になったことがあります。インプラント周囲炎にもなりやすいですか?
はい、歯周病の既往歴がある方はインプラント周囲炎のリスクが高いとされています。口腔内に歯周病の原因菌が多く存在する傾向があるためです。歯周病の治療を完了し、口腔内の環境を安定させた上でインプラント治療を行うことが重要とされています。インプラント治療後も、より注意深いメンテナンスが求められます。詳しくは「インプラントと歯周病の関係|治療前後の注意点」をご覧ください。
Q5. インプラント周囲炎を自分で治すことはできますか?
セルフケアだけでインプラント周囲炎を完治させることは困難です。ただし、粘膜炎(骨吸収が始まる前の段階)であれば、歯科医院での処置と併せてセルフケアを徹底することで改善が期待できます。自己判断で様子を見続けると進行する恐れがあるため、異変を感じた場合は早めに歯科医院を受診することが重要です。
まとめ:インプラント周囲炎は早期発見と予防が鍵
本記事のポイントをまとめます。
- インプラント周囲炎は「インプラントの歯周病」。インプラント周囲粘膜炎→インプラント周囲炎の2段階で進行する
- 罹患率は10〜20%程度と報告されているが、適切なケアでリスクは大幅に抑えられる
- 自覚症状が少ないため、定期検診での早期発見が非常に重要
- 天然歯の歯周病より進行が速い傾向があり、気づいたときには骨吸収が進んでいるケースもある
- 放置するとインプラントの脱落や全身への影響につながり、時間的・費用的な負担も増える
- 治療費は自由診療のためクリニック・処置内容によって大きく異なるが、進行して外科処置や撤去・再埋入に至るほど処置が大がかりになり負担が増える傾向があるため、早期治療ほど負担が小さい
- 非外科的治療から外科的治療・再生療法まで、段階に応じた治療法がある
- 毎日のセルフケア・定期検診・禁煙・全身管理が予防の柱
インプラント周囲炎は「かかってから治す」よりも「かかる前に防ぐ」ことが圧倒的に大切です。そのためには、インプラント治療後のメンテナンス体制が整ったクリニックで定期的にチェックを受けることが最善の方法といえるでしょう。クリニックの選び方は「インプラント歯科の選び方ガイド」も参考にしてください。
「インプラントの周囲炎が心配」「今の状態をプロに診てもらいたい」とお考えの方は、定期検診やメンテナンスに力を入れているクリニックへ相談してみてはいかがでしょうか。
メンテナンスについて詳しくは:インプラントのメンテナンス|通院頻度・費用・ケア方法を解説
寿命・耐久性について:インプラントの寿命は何年?耐久性とケアを解説
失敗・後悔事例について:インプラントの失敗・後悔事例と対策
費用の全体像は:インプラントの費用ガイド|相場・内訳・保険・節約法
痛みが心配な方は:インプラントは痛い?術中・術後の痛みと麻酔法を解説
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。インプラント周囲炎の症状や治療法には個人差があり、本記事の内容がすべての方に当てはまるわけではありません。インプラント治療は保険適用外の自由診療であり、外科手術を伴うため術後に痛み・腫れ・出血が生じる可能性があります。具体的な症状の判断や治療方針については、歯科医院にて直接ご相談ください。本記事はかがやきインプラント編集部が公開情報および下記の参考文献をもとに作成しています。
2026年3月12日時点の情報に基づいています(2026年7月更新)。
参考文献
- Berglundh T, et al. Peri-implant diseases and conditions: Consensus report of workgroup 4 of the 2017 World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions. J Clin Periodontol. 2018;45(Suppl 20):S286-S291.
- Derks J, Tomasi C. Peri-implant health and disease. A systematic review of current epidemiology. J Clin Periodontol. 2015;42(Suppl 16):S158-S171.
- Dreyer H, et al. Epidemiology and risk factors of peri-implantitis: A systematic review. J Periodontal Res. 2018;53(5):657-681.
